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介護事業への原点回帰を進め、生産性向上と
処遇改善の好循環を実現しながら、介護の未来の変革を目指します

介護職員不足や高齢者人口の急増といった構造的課題が深刻さを増すなか、介護事業への「原点回帰」を掲げた新中期経営計画の初年度を終えたチャーム・ケアグループ。業績・人材・テクノロジーの三つの軸で確かな手応えをつかんだ当期の振り返りと、次のステージに向けた取り組みについて、代表取締役会長兼CEOの下村隆彦に聞きました。

当期のポイント

  • 中核事業である介護事業に集中する「原点回帰」により、生産性向上と処遇改善の成果が顕在化しました。新規開設は10ホーム591室(うち首都圏8ホーム、近畿圏2ホーム)と計画どおりに進捗し、増収増益を達成。特に利益率の向上が顕著でした。当期より中間配当を実施するとともに、10期連続の増配となりました。

インタビュー

新中期経営計画の初年度となる当期を振り返り、事業活動の概況を教えてください。

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生産性向上と処遇改善の好循環が利益率の向上につながり、当社の付加価値労働生産性は大きく向上しています。また、既存ホームの入居率は高水準を維持し、M&Aでグループ入りしたホームのPMI(買収後の統合)プロセスも順調に進捗しました。

介護現場の運営力強化と生産性向上の取り組み

当期は介護事業への「原点回帰」の初年度として、介護現場の運営力強化と生産性向上に愚直に取り組んだ1年でした。建設市場での工期長期化や資材高騰、インフレ、人手不足など外部環境は厳しかったものの、連結売上高は順調に推移し、同営業利益・経常利益は期初予想を大きく上回り、営業利益率は前期の8.2%から10.8%へと改善しました。処遇面では、平均年収が480万円となり、業界平均を大きく上回る水準にありますが、高い処遇を維持しながら利益率を高めるという、業界では「両立が難しい」と言われてきた命題に、確かな答えを出すことができたと感じております。

この好業績の背景には、現場が一丸となって推し進めてくれた生産性向上施策の定着があります。当社では、テクノロジーの活用と適正な要員配置を組み合わせた、少数精鋭化のためのオペレーション改革を推進してまいりましたが、当社職員の付加価値労働生産性は689.2千円/月と、2022年6月期比で29.2%向上いたしました。

M&A戦略の進捗とその他事業の概況

入居率も、既存の介護付ホームで94.5%と高水準を維持しており、前期にM&Aで取得したホームについても、全ホームで入居率が改善しております。M&A戦略については積極的な推進姿勢を維持しており、買収時点では業績の改善が必要だったホームにおいても、当社の標準的なオペレーションや適正なコスト管理を導入することで、短期間で業績を改善させてきた実績があります。近年、グループに参画した企業においても、当初の想定を上回るペースで入居率・収益性の改善が進んでおり、今後も業績の改善を確信できる案件については、積極的にグループに迎え入れてまいります。

さらに、これまで培った新設ノウハウと情報収集力を活かし、グループ会社のグッドパートナーズによるホスピス事業の順調な立ち上がりをサポートし、不動産事業部によるグループ最適な物件活用など、周辺事業とのシナジー創出も着実に進んでおります。不動産事業については、調布市国領案件の売却が予定どおり完了しました。2027年6月期(以下、「来期」)以降、介護事業への一層の集中を加速し、生産性と質の向上を追求する準備が整いました。

介護業界の大きな課題である人材確保・定着において、当期はどのような進展がありましたか?

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業界トップレベルの処遇と選択的週休3日制の浸透により、新卒採用は過去最高水準を達成しました。来期は、介護スキルに応じた処遇を可能とする「ケアエキスパートプロジェクト」に着手します。

「処遇改善」と「働き方改革」の推進による成果

介護事業において、経営の根幹をなすのは間違いなく「働き手の確保」です。需要が長期的に拡大する介護業界において盤石な人材供給力を実現できれば、事業として揺らぐことはありません。当社が同業他社と一線を画す採用力を維持できている理由は、「高い処遇」と「働き方改革」という、働く人々が求める条件に正面から応えてきたことだと認識しております。

当社では、少数精鋭の運営やDX化によって生み出した利益を現場職員に還元する仕組みを構築し、新卒採用における初任給は業界トップレベルの水準としています。さらに当期より、年収総額は変えずに賞与の一部を月給化することで毎月の手取りを厚くし、足元の生活基盤を重視する若い世代に響く給与体系へと刷新いたしました。

また、2024年10月から全ホームに順次展開した「選択的週休3日制」については、介護職員の65%が活用しています。選択制で全員に強制としないことで、働き方の自由度を高め、より多くの介護の仕事を目指す方にご応募いただけるようになったと感じております。処遇改善の効果は、離職率の改善や採用コストの削減といった財務面にも寄与しはじめております。

これらの取り組みの結果、2027年4月入社の新卒採用では、100名の採用目標に対して130名を超える方が採用候補となりました。業界として採用に苦戦するなか、当社では「理念や成長意欲に共感する人材に選ばれる企業」になるための仕組みづくりを一層強化してまいります。

精鋭化をさらに進めるべく「ケアエキスパートプロジェクト」を始動

来期からは、介護職員の「精鋭化」を次の段階に進めるため、業務の専門化・分業化を推進する「ケアエキスパートプロジェクト」の実証実験を複数のモデルホームで始動いたします。これは、介護スキルの高い職員が困難なケアを担い、そのスキルと業務に見合った処遇を提供する新たなチャレンジです。介護の世界では、経験を積んでも給与がほとんど上がらないという構造的な課題がありました。当社は、この構造を根本から変えたいと考えております。スキルが高く、やる気がある介護人材に選ばれることで、次の生産性革命を推進したいと考えております。

介護職員のスキル向上のため、教育・研修の仕組みも大きく変えております。研修センターでの座学中心の体制から脱却し、経験値の高い教育研修部員が各ホームに出向いて直接指導する体制への転換をさらに進めました。また、新規開設に重要な役割を担うホーム長のマネジメント力・営業力強化のため、経営トップが現場におもむき、レベルアップ研修を行っております。私は近畿圏を担当しておりますが、経営の想いも現場でこそ伝わるものだと確信しております。

介護DXの推進におけるテクノロジー活用の進捗、新たな取り組みについて教えてください。

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人員配置比率「3:0.9」の認可取得や配膳ロボット・AIポータブルエコーの全ホーム展開など、介護DXへの取り組みを着実に推進しています。

人員配置比率「3:0.9」の取り組みの進捗

当期の大きな成果の一つが、人員配置比率「3:0.9」の届出の実施・受理の進捗です。2024年4月より緩和された上限制限ですが、当社の「チャーム西宮用海町」が全国初の認可を受けました。当期は10ホームを対象として実証を行い、2026年3月の「チャームスイート緑地公園」を始めとする5ホームが適用を受け、その他のホームも届出の受理待ち状況にあります。

この認可は、テクノロジーの活用と生産性向上の取り組みを複合的に組み合わせることで初めて可能となるものです。サービスの質を落とさず、スタッフの負担も増やさずに効率を高められているとの評価を行政にいただけた結果であり、現場職員一人ひとりが経営の原点を理解し、やるべきことを適切に実践してくれた結果だと捉えております。

介護DXについては、アプリ型インカムの全ホーム導入を完了し、配膳ロボットの稼働による業務時間の削減、業界初となるAIガイド付きポータブルエコーによる排泄ケアの全ホーム導入、清掃ロボットによる時間創出と清掃コストの削減など、各領域で定量的な成果が積み上がっております。また、生成AIを活用したケアプランの自動作成も、当社が運営する全ての介護付有料老人ホームで利用を開始しております。こうした取り組みの積み重ねが、少数精鋭化の基盤として着実に成果につながってまいりました。

未来の介護を見据えたイノベーションに挑戦

当社は既存の介護モデルを追求するのではなく、社会や業界そのものを変革する「イノベーター」でありたいと考えております。日本の高齢者人口は今後も増加を続け、1970年代前半に生まれた「団塊ジュニア世代」が65歳以上の高齢者となる2040年には、介護要員が約57万人不足すると試算されています。一方で、建築コストの高騰や人件費の上昇により、新しい介護施設の建設や従来型の運営自体が困難になりつつあります。人口動態やマクロ環境の現実を突き詰めると、介護需要を人材の確保だけでは賄いきれずに、大量の「介護難民」が発生する時代が近い将来に訪れます。この構造的課題を解決する手段こそが、テクノロジーによる抜本的な自動化・省力化です。

その先頭を切る取り組みとして、当社は来期より、業界で初めて「フィジカルAIロボット」の介護現場導入に向けた実証実験を開始する計画です。AIベンチャー企業のドーナッツロボティクス社が開発した人型ロボット「シナモンミニ」などを活用し、東京都江東区の「チャーム清澄白河」のホームにおいて、配膳・下膳、洗濯物の配達、玄関対応、さらにはナースコール対応や居室の見守り・声かけなど、約10項目の業務代替を検証してまいります。いち早くロボットとの共生モデルを介護の現場で磨き上げ、介護業界の「イノベーター」として、人とロボットが協働するホームのモデルを当社が築いていきたいと考えています。

株主の皆さまへのメッセージ
~真の変革をもたらす「イノベーター」であり続けるために~

  • サステナビリティの取り組みについては、特にヤングケアラー支援の輪が大きく広がりました。家族の介護を日常的に担い、学業や将来の夢を後回しにせざるを得ない18歳未満の子どもたちへの支援は、介護事業者として避けて通ることができない社会課題だと考えております。
  • 現在、神戸市・京都市・品川区・兵庫県との連携協定締結が実現し、レスパイト支援・奨学金支援・就労支援の三本柱で取り組みを展開いたしました。また、当社のホームに子どもたちが集い、ご入居者様と一緒にカフェイベントを楽しむ、といった交流が、子どもたちの自己肯定感を育み、ご入居者様にも豊かな時間をもたらしています。今後もさらに連携自治体を広げ、この取り組みを全国に広げてまいります。
  • 当社グループは、創業以来培ってきた現場力と経営管理力に磨きをかけるとともに、次世代を見据えた経営体制の強化を着実に進めております。私は、トップ経営者にとって最も重要な資質は「強い好奇心」と「明確な発信力、すなわち情報を発信し、具体化する実行する力」であると考えております。チャーム・ケアグループは、現在の経営トップはもちろん、次世代を担うリーダーたちが中心となり、安きに流れることなく、誰もが挑んだことのない課題に率先してチャレンジし、業界や社会に真の変革をもたらす「イノベーター」を目指してまいります。
  • 「量から質」への転換に大きく舵取りをした2018年当時より、当社は、①競合他社に選ばれる「競争力」、②介護の質を牽引する「社員力」、③高い利益率を誇る「財務力」、④業界トップクラスの「社員の処遇」という4つのNo.1を謳い、業界No.1のホームづくりを目指してまいりました。この想いは今も変わらず、今後とも、真の「イノベーター」として、企業価値の持続的な向上を図るとともに、適切な株主還元の拡充に努めてまいります。株主の皆さまにおかれましては、当社グループの未来に変わらぬご支援とご期待を賜りますようお願い申し上げます。