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介護事業者の殻を打ち破り、その周辺領域での
事業投資を推進し、事業の多様性を実現してまいります。

2024年6月期目標である連結売上高500億円、運営ホーム数100ホーム、さらに中・長期目標である連結売上高1,000億円以上を掲げ、当期から成長期に入ったと語る代表取締役会長兼社長の下村隆彦。第1の柱の介護事業に加え、ヘルスケア・デベロップメント事業、介護・看護・医療福祉を専門とする人材サービス事業など、多様な事業を通じた成長戦略について聞きました。

当上半期のポイント

  • オミクロン株の発生など不透明な事業環境が継続するなか、当期より「収益認識に関する会計基準」の適用があり、介護事業の売上高計上の一部が会計上の計上時期が先送りされる形となりました。
  • 一方で、前期に開設したホームやM&Aによる4ホームの寄与に加えて、ヘルスケア・デベロップメント事業が始動したことで、期初計画を概ね達成することができました。

インタビュー

当上半期の事業活動・新たな事業展開の概要、ならびに業績のレビューをお願いします。

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第1の柱の介護事業において、首都圏で2ホーム、近畿圏で1ホーム、計173室を新規開設しました。また、2021年11月にグループ入りした株式会社ライクが運営する4ホーム、410室(大阪府、土地建物自社所有)が加わりました。

第1の柱である介護事業、第2の柱として当期スタートしたヘルスケア・デベロップメント事業の概況をご報告いたします。

<介︎護事業>

当上半期は、ワクチン接種の促進による経済活動の回復傾向が期待されましたが、オミクロン株による第6波の発生で、不透明な事業環境がさらに継続いたしました。

2022年に入り、当社におきましても運営するホームでクラスターが発生いたしましたが、リスクマネジメント室によるコロナ発生情報収集の徹底や、介護スタッフやその同居家族などが感染者や濃厚接触者になると懸念される情報が入った場合は、対象者に対し、直ちにPCR検査を当社独自に実施するなど、迅速な初動対応を徹底するようにしております。現在、ご入居者さま・スタッフに対する3回目のワクチン接種も実施中です。

このような環境のもと、営業活動に動画によるホーム内部のご紹介や「オンライン入居相談」を取り入れるなどの工夫を行っております。一部のホームで入居率の改善が遅れるなどの影響が出ておりますが、開設2期目を経過した既存ホームの入居率は93.7%と、高い水準を維持することができました。

コロナ禍において、既存ホームが高い入居率を維持できている背景には、当社のドミナント戦略があります。感染者が出たホームに周辺ホームからの応援が可能であるため、運営面に大きな支障をきたしておりません。

また、当期より「収益認識に関する会計基準」の適用があり、介護事業における入居一時金の初期償却を5年に按分することになったことから売上高の一部計上が先送りになりました。

<ヘルスケア・デベロップメント事業>

当期よりスタートした当事業では、自社開発の有料老人ホーム『ソナーレ・アテリアス久我山』(他社運営)の売却が決まりました。

このほか、他社運営の大田中央案件、自社運営の苦楽園案件、仙川案件、兵庫県案件などの複数の案件が進行しており、介護事業に続く第2の柱としての事業成長が期待されます。

なお、当上半期にグループ入りした株式会社ライクの4ホームは、大阪府下の当社ドミナント圏に立地し、すべて介護付有料老人ホーム、かつ土地建物を自社所有しております。これらの自社所有不動産については、当社のアセットライト経営志向を踏まえ、今後のヘルスケア・デベロップメント事業につなげていきたいと考えております。

2024年6月期目標、さらに中・長期目標実現に向けた成長戦略の概要についてお聞かせください。

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介護事業にとらわれず、介護事業の周辺領域での事業構築の推進、加えてデジタル技術と融合した新たな事業の創出を目指してまいります。

当社は、介護事業者として成長してまいりましたが、26種類に分類される介護サービスのなかでも、介護付有料老人ホームに特化してまいりました。今後、毎期10ホーム前後を開設していったとしても、売上高の年間成長は数十億円の規模にとどまります。このことは、介護事業だけでは成長率が低下していくことを意味します。

このため、今後は介護事業の周辺事業をいかに構築するかが重要になると考えております。第2の柱であるヘルスケア・デベロップメント事業を立ち上げたのも、この考え方によるものです。

2020年7月にグループ入りした株式会社グッドパートナーズが担う介護業界などに特化した人材サービス事業は第3の柱に育成中で、喫緊の課題である介護業界における人材確保・育成への貢献を目指しております。

コロナ禍において、営業活動に制限がかかっているものの、当社グループへの人材供給はもちろんのこと、首都圏のほか、近畿圏での事業所の開設を通じ、採用力の強化を図るとともに、清掃業務などの周辺領域にサービスを展開しております。

さらに、これからの時代、デジタル技術を取り込んだ新たな事業の構築は非常に重要な戦略投資領域だと考えております。その一環で、AI対話技術を有するスタートアップ企業のウェルヴィル株式会社への2回の出資、合計6億円を決定し、第1回出資を2021年11月に実施いたしました。第2回は2022年7月実施の予定です。

新たな成長期に入った当期以降、M&Aを含めた事業投資を積極化し、当社グループの将来の成長の源泉となる事業の多様性を推進していきたいと考えております。

なお、事業別2024年6月期売上高目標を、介護事業350億円(当期予想は250億円)、ヘルスケア・デベロップメント事業75億円(同25億円)、人材サービス事業20億円(同12億円)といたしました。このほか、様々な医療関連事業を展開するシップヘルスケアホールディングス株式会社との業務提携が2020年5月にスタートしており、当提携やウェルヴィル社との資本提携を含むその他事業は、55億円(同13億円)を目指しております。

戦略投資と位置付けるIT化、デジタル化への取り組みの方向性についてお聞かせください。

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ホームにおけるIT化の促進と教育・研修改革、そしてデジタルと融合する新事業立ち上げの加速が取り組みの大きな方向性となります。

<事業現場におけるIT化>

ホームにおいては、ご入居者さまへのサービス向上とスタッフの業務効率化・負担軽減のために、IT化を促進しております。インカムの導入に続き、首都圏の一部ホームにおいては、ご入居者さまのベッド上の位置・体動・姿勢など生活リズムを把握することができる見守りセンサーを導入しております。

これにより、ご入居者さまの睡眠状態を把握することで健康・生活の改善につなげたり、ご入居者さまの行動をいち早く察知することで転倒などの事故防止を図ります。結果として、夜間の全室訪室が不要になり、それによって生まれた時間を活用し、介護サービスの更なる品質向上が期待されます。

教育・研修の現場でも、研修拠点の移転や増設を行い、eラーニングや受講管理システムの導入を行うことで、従来の集合研修に加え、eラーニング、オンライン研修など、それぞれの特長を活かして知識・スキル・マインドを総合的に教育・研修する体制を整備しております。

<デジタル技術を融合した事業の創出>

「ひとりひとりの豊かな暮らしを支えるAIの実装」を掲げるウェルヴィル社では、人に共感しながら寄り添い、信頼関係を構築するAI対話エンジン『LIFE TALK ENGINE』の開発・提供を行ってきました。今後は、同エンジンを用いたアプリやサービスなどの開発に注力いたします。

具体的には、高齢者の方が、人と同じレベルでロボットやアバターと日常的な会話ができることを想定し、高齢者の方の認知機能の把握、認知症の予防、健康情報の把握、孤独感の緩和、安否確認など、様々な関連サービスを提供できると考えております。当社グループの最大のテーマである「健康寿命の延伸」にも大きく貢献できる事業として、介護事業を超える新たな柱に育つことを期待しております。

さらに、高齢者の方のみならず、高齢者施設で働くスタッフのストレス情報の把握、メンタルヘルスのサポートなど、当社グループの事業現場における応用も視野に入れております。

現在、当社ホームにおける実証実験を計画しており、その結果を一日も早く皆さまにご紹介できるよう、準備を進めております。デジタルの世界はスピード、そして先駆者であることが重要です。当事業の立ち上げを通じ、介護関連業界における対話ロボット・アバターNo.1を目指したいと考えております。

株主の皆さまへのメッセージをお願いします。

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2022年1月の東京証券取引所によるプライム市場選択結果の公表を受け、2022年4月より同市場への移行を予定しております。

株主の皆さまをはじめ、多くのステークホルダーの皆さまのご支援のもと、プライム市場への移行が決まり、心より感謝しております。

今回、各事業領域で2024年6月期にどれだけの事業規模を達成するかを設定することにより、具体的な数値と期限を明確にいたしました。目標を明確にすることで、戦略投資を加速し、事業における領域拡大、事業の多様性を推進してまいります。

事業の多様性は、一方で新たな領域を担う社員の多様性にもつながり、より盤石な経営基盤を構築できるものと期待しております。

新たな成長局面に立つ当社グループは、「豊かで実りある高齢社会」づくりへの事業を通じた貢献を使命と考えております。また、この使命を基礎として、事業活動を通じてSDGsに関連する取り組みを重視しております。

その一環に、介護事業で展開している「アートギャラリーホーム」があります。これは、絵画やオブジェなどのアート作品が人々の心を癒し、穏やかで潤いのある生活環境を演出するべく、オリジナルのアート作品をホーム内の随所に展示する取り組みです。

この活動の新たな形として、若いアーティストとご入居者さまをつなぐアートを通じた「コミュニケーションプログラム」や「アートギャラリーホーム」に参加する作家による作品展をホームで開催しております。今後とも様々な企画を通じ、ご入居者さまの生活に潤いを提供してまいります。

事業の多様性を通じて持続的成長を目指す当社グループに対する変わらぬご支援をよろしくお願い申し上げます。