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中・長期目標を実現するため、高齢者生活サービスを
核とした新たな事業ポートフォリオの構築を目指します。

当社グループは、2005年6月期からの15年間を創業期と位置付け、2021年6月期以降を本格的な成長期と定義しました。2024年6月期の目標として、連結売上高500億円、運営数100ホーム以上を計画し、さらに中・長期目標として、連結売上高1,000億円以上を目指します。次世代の成長に向けた新たな取り組みについて、代表取締役会長兼社長の下村隆彦に聞きました。

当期のポイント

  • 新型コロナウイルス感染症対策に終始した1年でしたが、開設2年目を経過した既存ホームが95.4%という高い入居率を維持したことに加え、前期開設・当期新設ホームの入居が着実に進んだことで、個別売上高は対前期比で12.0%の増収となりました。
  • 利益面では、増収効果のほか、感染症対策費用を補助金で吸収した結果、個別経常利益が対前期比で28.1%の増益となりました。

インタビュー

2021年6月期の事業環境分析、主要事業の概況ならびに業績のレビューをお願いします。

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介護事業は、累計で64ホーム(首都圏25ホーム、近畿圏39ホーム)、4,289室(首都圏1,471室、近畿圏2,818室)となりました。不動産事業はヘルスケア・デベロップメント事業に名称変更し、2022年6月期の事業開始に向け、新規案件の開発を進めました。

介︎護事業

介護業界を取り巻く事業環境は、異業種からの新規参入が続き、競争がさらに激しくなっております。介護職の雇用情勢も、介護職員の確保という課題が継続しております。

一方で、高齢者人口、高齢者単独世帯は中長期的に増加すると想定され、介護サービスに対する需要の拡大が見込まれます。

コロナ禍において、当期はホーム運営や営業活動に制限を受けるなか、ご入居者さまの生命や健康を守るため感染防止に徹した1年となりましたが、介護が必要な方々のニーズに変わりはなく、ご見学のご要望などに可能な限りお応えできるよう努めてまいりました。

引き続き、中期計画に沿った展開が進捗し、当期末における首都圏ホームは25ホーム、1,471室(全体に占める割合はそれぞれ39.1%、34.3%)、『プレミア』『プレミア グラン』シリーズは11ホーム、529室(全体に占める割合はそれぞれ17.2%、12.3%)となりました。

また、感染症対策、感染状況の速やかな情報提供の徹底などがご入居者さま・ご家族さまの信頼につながり、既存ホームの入居率は引き続き高い水準を維持いたしました。

業績面では、コロナ禍での危険手当や感染対策費用の発生により売上原価が増加しましたが、感染対策費用に係る補助金を受給し営業外収益に計上したため、会計上は営業利益が下がり、経常利益で戻っているということになっております。

このように業績に大きな影響が出ることなく成長を継続できたことは、当社が介護付有料老人ホームに特化していることに加え、大変な環境においても、お客さまニーズにお応えするという使命感のもと、事業現場のスタッフが懸命に努力した結果に他ならないと感じております。

ヘルスケア・デベロップメント事業(旧不動産事業)

有料老人ホームの自社開発を担う当事業は、2022年6月期より始動するヘルスケア・デベロップメント事業として名称変更いたしました。これは、当事業が変動の大きい一般的な不動産事業ではなく、より安定的な介護事業周辺の事業であることを明確にするためのものです。

現在、2022年6月期中に売却予定の久我山案件(他社運営:70室)、2023年3月開設予定の苦楽園案件(自社運営:72室)、その他の開発を進めております。

当期より連結会計に移行

2020年7月、介護スタッフの人材派遣・人材紹介など、首都圏において人材サービス事業を展開する株式会社グッドパートナーズがグループ入りし、当期より連結会計に移行いたしました。同社の業績は順調に推移しております。

介護事業におけるホームの現場での効率化・省力化の進捗の概要についてお聞かせください。

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介護現場へのITの導入により、業務の効率化・省力化を推進するとともに、次世代を見据えた新たな働き方を模索してまいります。

過去2期にわたり、IT導入を通じた効率化が急速に進捗いたしました。コロナ禍が進捗の加速を後押ししてくれたのは確かです。これにより、ご入居者さまの生活を改善し、快適に暮らしていただけるためのサポートという、本来の介護業務に多くの時間をかける働き方、介護の品質向上を目指しております。

記録のデジタル化

これまで書類対応となっていたホームでの事故報告を完全データ化し、手書きで作成していた記録をタブレット端末上での記録に移行いたしました。この結果、記録面のみならず、管理面でも大幅な工数軽減を図ることができました。

見守りセンサーの導入

ご入居者さまの生体情報を自動で取得することで、身体の動きをセンサーで検知し、異常時にはアラートが出る仕組みであるライフリズムナビ(見守りセンサー)を導入開始いたしました。

これまで夜間は2時間に1度、居室に訪室しておりましたが、特に少ない人員体制の夜間の負担が大幅に軽減されることで、労働環境の改善が期待されます。また、ご入居者さまの安眠を妨げないことから、ご入居者さまの睡眠の質の向上につながると考えております。

インカムの導入

効果が大きかったのがインカム導入による情報共有です。従来、ホーム内のどこかで対応中の看護師を探すのに数分かかっていたものが一瞬で連絡が取れる、あるいは手の空いているスタッフを一瞬で探せることで、大幅な効率化につながりました。

インカム運用に際しては通信環境を整備する必要があり、現在は一部ホームへの導入に限られておりますが、環境整備を順次進めることで、全ホームへの導入を計画しております。

研修分野のIT化

研修分野にもIT化に関し、外部の体系化された教材を導入することにより、取り組みに拡がりが出ております。

2022年6月期では、入社直後のスタッフを主な対象としていた研修体系を見直し、Eラーニングの導入により、職種・キャリアに関わらず、しっかりとした研修の機会を提供でき、有効な研修計画も立てられるようになりました。

また、実技の習得は研修施設での研修が主流でしたが、今後はEラーニングと集合研修、そして離れた場所でホーム間の知識・情報を共有するオンライン研修を融合し、教育研修の質・量の向上を進めてまいります。

本格的成長期に移行した重要な局面における新たな取り組みについてお聞かせください。

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それぞれの時代のニーズに沿った事業を積極的に取り込み、ケア(介護)のみでない事業ポートフォリオの構築を目指します。

介︎護事業

前述のとおり、IT化を通じた業務の効率化、省力化を進めております。2025年度までに32万人の介護職員の増員が必要と見込まれる環境において、根本的な課題はホーム運営全般の生産性向上にあると考えております。すなわち、介助以外の領域の生産性向上です。

ホームの業務には、専門性を有する業務だけでなく、ご入居者さまの生活に関わる家事の延長のような業務も数多くあります。例えば、食事の配膳や掃除・美化などがその事例です。これらの業務をスピーディ、かつ簡潔、正確に行うことにより、ご入居者さまとの関わり合いの時間を長くすることができます。

私は常日頃から「常不信」、すなわち「常識を信じるな」と言っています。ホーム運営を抜本的に合理化するにはこの視点が不可欠です。このため、介護業界における常識に囚われない異業種出身者を採用し、取り組みの加速を図っております。

※出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく労働人材の必要数について」(2021年7月9日)

ヘルスケア・デベロップメント事業(旧不動産事業)

2020年6月期、新規ホームの開設資金として総額41億円強を調達いたしましたが、これにより、自社での土地調達から建設、売却ができる案件機会が大幅に拡大いたしました。

当事業での当社の強みは、優良な不動産情報を入手し、事業化に係る決断が速やかであること、さらに実際の事業性の高さにあります。この強みを活かし、市況が改善しつつある現在、土地調達を積極化したいと考えております。

加えて、当社は13ホームを自社所有しております。良い条件が整えば、これらの売却を進め、自社開発による自社運営、他社運営、所有ホームの売却へと、事業機会を積極的に拡げてまいります。

その他

グループ会社のグッドパートナーズ社は、2020年12月に経営体制を変更し、2021年4月には近畿圏への進出を開始いたしました。構造的な介護職員不足という社会的課題の解決の一助となるべく、事業拡大を推進しております。

2020年5月、シップヘルスケアホールディングス(証券コード:3360)との間に業務提携契約を締結し、同社が実質的に当社株式の29.44%を取得いたしました。

同社のグループ会社で、老人ホームを当社と同程度の規模で運営するグリーンライフ社と物品の共同購買を開始しており、購買力強化を図っております。

今後は、ヘルスケア・デベロップメント事業において、当社がホームの開設を行い、グリーンライフ社に運営を委託する、そしてシップヘルスケアホールディングスと土地の有効活用のための共同事業を推進するなど、協業の拡大を図りたいと考えております。

株主の皆さまへのメッセージをお願いします。

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中・長期的目標を実現するため、新たな事業ポートフォリオを構築する一方、持続的成長を実現するための経営基盤強化やSDGs的視点に立った事業活動を強化してまいります。

創業期の15年間で売上高196億円を達成し、成長期に入った当社グループですが、当期は連結売上高約230億円と、成長が加速しております。この成長は、多くのステークホルダーの皆さまのお知恵に支えていただいたおかげと、心より感謝しております。

当社グループは、2024年6月期に連結売上高500億円、中・長期的に同1,000億円を目指しておりますが、これは従来の延長線的な考え方では達成できません。今こそ、企業理念である「豊かで実りある高齢社会」づくりに基づき、高齢者生活サービスを軸に新たな事業を創出するために、M&Aなどの手法も取り入れ、事業ポートフォリオを大きく変えるべき局面にあると認識しております。

また、プライム市場への移行に際し、経営基盤をさらに強化してまいります。SDGsの視点からは、社会貢献、環境負荷の低減、ジェンダー平等の実現、ワークライフバランスの実現などを積極的に推進したいと考えております。

社会貢献においては、アートを取り巻く若手アーティストの育成に取り組んでまいります。環境負荷低減の視点からは、使用できなくなった制服のリサイクルを行うとともに、建物には可能な限り太陽光発電を取り入れてまいります。

これらの取り組みを通じ、ブランドの認知度と信頼のさらなる向上を図り、株主の皆さまをはじめとするステークホルダーの皆さまから選ばれる会社を目指し、その結果として業績を含めた会社の成長を実現してまいります。