戦略的なDX化推進による介護事業の進化、
その他の事業の立ち上げ・強化により、さらなる成長を追求します。
積極的にDX化を推進し、主力の介護事業のアップデートを図りながら、第2の柱である不動産事業の推進、それに続く新たな事業の柱の構築に取り組むチャーム・ケアグループ。事業活動の現状と中期目標である連結売上高1,000億円以上を目指す成長戦略について、代表取締役会長兼社長の下村隆彦に聞きました。
主力の介護事業につき、当上半期の事業環境、ならびに事業活動のレビューをお願いいたします。
OPENCLOSE特に当第2四半期は、当社の既存ホームが新型コロナウイルス感染第8波の影響を受けましたが、ライク社においてホーム運営に加え、採用、教育研修などを当社がサポートしたことで、ライク社の平均入居率が大幅に改善し、業績に貢献しました。また、専門部隊を立ち上げるなど、今後の事業環境に鑑み、DX化の推進にも積極的に取り組んでいます。
当社のホームにおいても、新型コロナウイルス感染第8波の影響を受けたものの、集団感染防止策の徹底に加え、ホーム内部の動画紹介やZoomを用いた「オンラインかんたん相談」の実施など、営業活動を工夫することで、入居率を高い水準で維持することができました。
2021年11月30日付でグループ入りしたライク社については、エリアマネージャー、一部のホーム長、リーダーを当社から出向させ、ホーム運営をサポートしております。さらに、人材開発チームが採用をサポート、教育研修も当社のインフラを展開するなど、運用面、入居面などを当社ホームの水準に引き上げる取り組みを実施してきた結果、平均入居率が大幅に改善いたしました。これらの取り組みに加え、現在はシステム面の見直しに着手しております。
ロシアによるウクライナ侵攻や急激な円高を背景とした光熱費・物価上昇に対しては、ご入居者さまにご理解をいただいたうえで、管理費の値上げを順次実施することで、コストの吸収を図ってまいります。
介護業界は今後も需要拡大が見込まれることから、異業種からの新規参入などにより、競争が激しさを増しています。採用環境も益々厳しくなることが予想されるため、従来の人海戦術ではなく、DX化推進などを含めて、少数精鋭化が必須と考えております。当社グループでは、サービス品質の向上と生産性の向上による現場の負荷軽減との両立を実現するべく、取り組みを強化してまいります。
中期経営計画の成長戦略に基づき、当期の事業活動の概要などについてお聞かせください。
OPENCLOSE第1の柱の介護事業では、首都圏・近畿圏において、中・高価格帯を中心にバランスの良い開設を継続しております。第2の柱の不動産事業、特に中長期的な需要拡大が見込まれるヘルスケア・デベロップメント事業では、安定的な開発サイクルを追求しております。第3以降の柱を目指す新規事業では、高齢者を対象としたAIヘルスケア次世代サービス事業立ち上げの準備を進めております。
<介護事業>
介護付有料老人ホームに経営資源を集中し、かつ首都圏・近畿圏の都市部に中・高価格帯を中心とした付加価値の高いホームによるドミナントを構築し、高い入居率を維持してまいります。当期は8ホームの開設を予定しておりますが、いずれも最寄り駅から徒歩圏内の好立地を確保しております。
介護市場では引き続き高齢者人口が増加し、介護サービスに対する継続的な需要拡大が見込まれる一方で、人材確保が大きな課題です。サービスの向上を図りつつ、介護スタッフの業務効率化・負荷軽減を実現していくためには、戦略的なDX化の推進が必須だと当社は考えております。
当上半期、当社は厚生労働省による「令和4年度介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」実証協力企業3社のうちの1社に選定されました。2022年末までの約半年をかけて、近畿エリアの「チャームスイート宝塚売布」、「チャーム加古川駅前」、「チャームスイート宝塚中山」の3ホームで実証実験を実施いたしました。こうした知見も活かしながら、実りあるDX化を推進するため、2022年7月に介護DX推進課を創設し、本格的な取り組みに着手しております。
<不動産事業>
主力のヘルスケア・デベロップメント事業では、当社が自社開発中の東京都大田区仲池上案件について、広範な事業領域において包括的な連携を強化しているシップヘルスケアホールディングス株式会社のグループ会社を運営事業者とする基本合意を締結いたしました。有料老人ホーム市場は、賃貸マンション市場などと比べて安定的に需要の拡大が見込まれることから、複数の開発案件が進行中で、安定的な収益基盤にするべく、今後も取り組みを進めてまいります。
さらに、ヘルスケア・デベロップメント事業の展開にともない豊富に入手する情報を活かした有料老人ホーム以外の不動産事業についても、収益化を目指してまいります。
<新規事業>
ウェルヴィル株式会社とのAI対話エンジン『LIFE TALK ENGINE』をベースにした対話可能なアバターの開発は、早期商品化に向けた会話実験を当社ホームで実施するなど、本格的な事業開始に向けて準備を進めております。高齢者の方々との対話を通して、認知症の予防や認知機能・健康情報の把握、孤独感の緩和、安否確認などのサービス提供をはじめ、“健康寿命延伸”をテーマにしたAIヘルスケア次世代サービスの新たな事業モデル創出を目指し、第3の事業の柱に成長させたいと考えております。
さらに、第4以降の柱の構築に向け、M&Aも視野に、介護周辺事業はもちろん、介護関連に限定しない事業も含めた新たな事業の創出に取り組んでまいります。
介護人材のレベルアップ、ホーム運営の少数精鋭化を実現するため、介護DX推進課が新設されました。同部署を通じた今後の取り組み、介護事業のアップデートの方向性についてお聞かせください。
OPENCLOSE介護サービスの品質向上と生産性向上による介護現場の負荷軽減との両立を目指し、ホーム運営を熟知するメンバーで構成する介護DX推進課が介護現場のDX化を戦略的に推進しております。また、サービス向上を当社グループ全社で促進するため、教育・研修体制の強化にも注力いたします。
高齢者人口の増加に対し、それを支える介護人材が不足している状況に鑑みますと、DX化による課題解決は必須と考えます。当社では、教育研修部の傘下に、当期、介護DXの戦略部門として、介護DX推進課を新設し、厚生労働省の実証実験にも参画いたしました。この実証実験を通じ、機械装置を導入するだけでは真のDX化の実現は難しいという考えを改めて強く持ちました。
介護DX推進促進役の育成を含めた現場への落とし込み、さらに機械装置を使う人々の意識変革、機械装置を使いこなすことによる現場への浸透が何よりも重要になるため、介護DX推進課を中心に今後3年間で全社への浸透を目指すとともに、実りあるDX化によって、ご入居者さまへのサービス向上、介護現場の負荷軽減ならびに従業員の処遇改善を実現してまいります。
また、教育研修課と介護DX推進課が連携し、教育・研修センターでの集合研修、eラーニング・受講管理システムによるオンライン研修など、各種研修を組み合わせて、知識、スキル、マインドを総合的に教育・研修するための体制を充実いたします。グループ会社のグッドパートナーズ社やライク社のスタッフにも同様の教育・研修を展開し、グループ全体で介護サービスのさらなるレベルアップを図ってまいります。
サステナビリティ基本方針を開示されました。サステナビリティの取り組みに関し、大切にされている価値観についてお聞かせください。独自の取り組みとして、ヤングケアラー支援やアートギャラリーホームなどがありますが、活動の概要と今後の方向性についてお聞かせください。また、働きやすい環境の整備や女性活躍についての考え方についてもお聞かせください。
OPENCLOSE当社は、企業理念に則り「豊かで実りある高齢社会」づくりに貢献することをミッションと位置付けており、その遂行に際しては、プライム市場に上場する企業として、サステナビリティ基本方針に基づく適切な対応に努めております。ステークホルダーの皆さまとの協働を通じ、持続可能な社会の構築への貢献とともに、中長期的な企業価値向上を目指してまいります。
当社はサステナビリティ基本方針のうち、事業を通じて取り組む重要課題として、①地球環境問題への配慮、②人権の尊重、③従業員の健康への配慮、労働環境の整備、処遇改善、④社会との公正・適正な関わり、⑤リスクマネジメント(危機管理)の5つの項目について目標を設定し、取り組みを進めております。
特に、「③従業員の健康への配慮、労働環境の整備、処遇改善」では、働きやすい環境の整備と女性管理職の登用に取り組んでおります。各種福利厚生制度を充実し、子育て中の方でも安心して働けるように、次世代育成支援対策推進法第13条に基づく基準適合一般事業主として「子育てサポート企業」の認定を受けております。また、女性管理職登用を積極的に推進しております。現状、女性管理職比率は約27%超となっておりますが、今後、40%台を目指してまいります。また、今年度より定年年齢を60歳から65歳に延長し、高年齢者が活躍できる環境の整備を行っております。
「④社会との公正・適正な関わり」では、ヤングケアラーの学業と就職を中心とした支援活動に積極的に取り組んでおります。特定非営利活動法人ふうせんの会と協働し、「子ども・若者たち(ヤングケアラー)のつどい」を定期的に開催するとともに、ふうせんの会の活動資金の援助にも参画しております。神戸市が全国の自治体で初めて「こども・若者ケアラー相談・支援窓口」を開設して以来、当社はさらなる支援の受け皿として、介護事業者ならではの支援をさせていただいております。具体的には、お部屋とお食事を無料で提供する“レスパイト「息抜き」支援”、柔軟に勤務できるアルバイトを斡旋する“中間的就労「就労訓練」支援”、奨学金を当社が返還する“奨学金支援”などがあります。
当社が高価格帯ホームを手掛けた当初から、若手アーティスト支援を目的におこなってきたアートギャラリーホームの活動は、公益社団法人企業メセナ協議会による「This is MECENAT 2022」に認定されました。また、2023年1月には、「チャームプレミア御殿山参番館」において「第21回アートギャラリーホーム展」を開催するなど、多くの若いアーティストの創作活動を支援する公募コンクールとしての認知も高まってきております。
株主の皆さまへのメッセージをお願いします。
OPENCLOSE時代の変化に対応することにとどまらず、自ら変化することで未来を切り拓いてまいります。介護事業を基盤としつつ、世の中にニーズのある事業にチャレンジし、変化し続けることでさらなる成長を追求してまいります。
経営はチャレンジであり、チャレンジし続けなければ会社の成長はないと私は考えております。予算策定に際し、当社はより高い目標を設定いたしますが、これは高い目標で社員を縛るのではなく、社員のチャレンジ意識を持続的に鼓舞することを目的としております。特に私が重視するのは利益です。社員一人ひとりが、高い目標に向けて最大限努力し続けていることが、当社の対前期比での着実な利益成長につながっていると実感しております。
これからの時代は、時代の変化に対応するだけにとどまらず、自ら変化することが重要です。変化に対応するだけでは、生き残ることはできても勝ち残ることはできないと考えるからです。当社の祖業は介護事業ですが、それにとらわれず、介護周辺分野のあらゆるニーズを模索しながら積極的に新規事業に取り組み、2024年6月期目標の連結売上高500億円、中期目標の連結売上高1,000億円以上を目指し、さらなる成長にチャレンジいたします。
株主の皆さまには、経常利益成長率30%、売上高成長率20%、経常利益率10%を指標に、さらなる業容拡大に挑戦する当社グループへのご支援を引き続き賜りますようお願い申し上げます。