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創業期から本格的な成長期への移行を実現し、
スピード感ある成長を目指してまいります。

連結売上高330億円、経常利益33億円以上という2022年6月期目標、連結売上高500億円、運営数100ホーム以上という中期目標のもと、介護事業に加え、不動産事業という第2の柱の構築が始まりました。第1号ホームを開設してから16年目の現在、本格的な成長期に入ったと語る代表取締役会長兼社長の下村隆彦に、次世代の成長に向けた新たな取り組みについて聞きました。

当期のポイント

  • 当期末にかけて、コロナ禍の拡大に伴う影響がありましたが、既存ホームが96.9%という高い入居率を維持し、新規開設8ホームが加わったことで、売上高は期初予想をほぼ達成し、対前期比でも18.5%増の増収となりました。
  • 利益面では、既存ホームの増加による増収効果や本社経費の抑制などが奏功し、営業利益・経常利益は対前期比で30%以上の増益となりました。

インタビュー

当期の事業環境分析、事業活動ならびに業績のレビューをお願いします。

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介護事業では、累計で59ホーム(首都圏20ホーム、近畿圏39ホーム)、4,002室(首都圏1,184室、近畿圏2,818室)を実現するとともに、第2の柱の不動産事業では、有料老人ホームの自社開発事業(自社運営・他社運営)の立ち上げを進めました。

介護業界を取り巻く事業環境は、異業種からの新規参入などにより、競争の激化が続いております。その中で、消費税引き上げに伴う2019年度の臨時介護報酬改定は、勤続年数10年以上の介護福祉士を中心とした特定処遇改善加算等の、プラス改定となりました。

介護職の雇用情勢につきましては、コロナ禍の影響を受け、2020年6月の有効求人倍率は4.04倍(全国平均・常用(パート含む))となり、ピーク時より低下しておりますが、全職種平均の0.97倍を大きく上回る状況が続いております。

このような事業環境のもと、介護事業では“「量から質」への転換”を推進するため、2019年8月開設の『チャームプレミアグラン 松濤』(東京都渋谷区)、2019年12月開設の『チャームプレミア山手町』(神奈川県横浜市)など、首都圏での高価格帯ホームの開設を加速いたしました。

この結果、当期末での首都圏ホームは20ホーム、1,184室(全体に占める割合はそれぞれ33.9%、29.6%)、うち、『プレミア』『プレミア グラン』シリーズは9ホーム、440室(全体に占める割合はそれぞれ15.3%、11.0%)となりました。

不動産事業では、安定的な収益基盤となるような開発サイクルを持続する方針のもと、有料老人ホームの自社開発案件(自社運営:チャームスイート苦楽園、他社運営:久我山案件)に着手いたしました。いずれも、2022年6月期の開設予定です。

業績面では、当第4四半期にコロナ禍の影響を受けながらも、目標である増収率20%、増益率30%(経常利益)をほぼ達成することができました。

新規ホームの開設資金として、2019年12月に実施いたしました公募増資・第三者割当増資に係る手数料や税金の支払いの増加、2020年5月、6月に支給したコロナ禍での特別勤務手当、新型コロナウイルス感染症への感染予防対策費用など、期初予想に織り込んでいない経費を1億円以上計上いたしましたので、実質ベースでは、期初予想をさらに上回った内容です。

この理由の一つに、ホームの運営スタッフが様々な対策を実施し、ホームの見学を継続したことが挙げられます。コロナ禍の環境においても、入居を希望される方々に対して、受け入れ努力を継続した結果、収益に与える影響を最低限にとどめることができました。

引き続き、衛生管理を徹底して強化し、感染対策をより万全なものとすることで、ご入居者さまの安全・安心を第一とした取り組みを一層強化してまいります。

介護事業、不動産事業における取り組みの現状と今後の方向性についてお聞かせください。

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介護事業ではバランスのとれたホーム開設と業務効率化を、不動産事業では2つの運営モデルによる有料老人ホームの開発を進めております。

▶介︎護事業
当事業で最も大事な指標は入居率だと考えております。当期も、前期(97.0%)とほぼ同様の高水準(96.9%)を維持することができ、利益成長を牽引いたしました。

シリーズ別では、中価格帯に属する『チャーム』『チャームスイート』は潜在ユーザー数が多く、市場における認知度も高いため、より速いスピードで入居率が高まる傾向にあります。一方、高価格帯の『プレミア』『プレミア グラン』は、潜在市場が小さく、高価格帯市場での認知が十分でないため、入居のスピードが遅く、既存ホームについても、未だ先行投資期間にあります。

現在、潜在顧客へのアプローチや新たな紹介チャネルの構築など、高価格帯市場に焦点を合わせたマーケティング・営業の取り組みを強化しております。さらに、『チャームスイート』を含めたアッパーミドルから高価格帯シリーズを中心に、バランスの良い開設を推進しております。

利益面で重要な労務費のコントロールにつきましては、2018年6月期に始動した、人員配置の適正化のための業務表(CSE)作成のシステム化や、介護記録業務の効率化に向けたタブレット端末が全ホームに導入され、本格稼働が始まりました。

これら取り組みの成果は、まずはホーム運営で使用されるペーパーの削減や情報漏洩リスクの低減などに表れておりますが、ホーム運営へのさらなる浸透を通じ、サービスの質向上による利益寄与につなげていきたいと考えております。

2020年5月、首都圏において介護施設への介護スタッフの人材派遣などを展開する株式会社グッドパートナーズの100%子会社化を発表いたしました。介護業界が構造的な人材不足にあるなか、当社においても採用コストが増大してきており、グループの派遣会社を巻き込んだ経費コントロール、さらに高価格帯ホームへの優秀な人材派遣など、シナジー創出の方向性を模索してまいります。

▶不動産事業
当期は、新規ホームの開設資金として、公募増資・第三者割当増資により、総額41億円強を調達いたしました。

コロナ禍の影響で、介護施設に関する設備投資意欲が鈍化する可能性が高い業界環境において、調達した手元投資資金を基に、有料老人ホームの自社開発による不動産事業を加速する好機であると捉えております。自社運営物件のみならず、他社運営物件の開発も一層強化してまいります。

2020年5月、医療機関の新設・移転増改築などのニーズに対し、トータルソリューションサービスの提供を核に、医療・保健・福祉・介護・サービスの5分野で事業を幅広く展開するシップヘルスケアホールディングス株式会社と業務提携契約を締結いたしました。今後は、同社が展開する有料老人ホーム運営事業に対しても、当社不動産事業を通じた新規開設のお手伝いを提案できればと考えております。

2020年5月に発表した経営基盤強化のための組織変更の目的についてお聞かせください。

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さらなる成長に必要な経営基盤構築を目指しております。特に、予算管理の徹底により、ホーム運営の一層の効率化を図ってまいります。

2020年5月、7月以降の組織変更として、経営体制の強化・充実に向けた「会長職」の設置、リスクマネジメントの推進・強化や全社的な人材採用体制の強化、介護事業・不動産事業の基盤強化などを発表いたしました。

今回の組織変更のなかで、私が最も重視しておりますのが、経営戦略の推進ならびに業績管理の高度化を図るために新設した「経営戦略室」です。

この組織の目的は、業務の効率化を図るための組織はどうあるべきか、どのように収益を上げていくべきかについて考え、予算管理を本社主導で徹底することにあります。

すでに稼働しておりますが、まずは労務費のコントロールに着手しております。人員を削減するなどの短絡的な考え方によるのではなく、予算管理の徹底による労務費のコントロールを目指しております。

介護業界において、当社の予算管理はかなりしっかりしていると感じておりますが、従来はホーム主導でのコントロールであったため、予算を達成できなかった場合の原因追求やそれに基づく解決策の検討・実施などが十分ではありませんでした。

本社主導の新たな手法で予算管理の徹底を推進することにより、“利益を出してこそ、会社の存在価値がある”という考え方をホーム運営の現場にもしっかり浸透させたいと考えております。

コロナ禍の発生は、日本の介護業界にどのような変化をもたらすとお考えでしょうか。

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人を介したサービス提供という在り方、そして中長期的な人材不足という傾向は変わらないと思います。その中で勝ち抜くためには、介護人材から選ばれる会社を目指す必要があります。

介護は現場でお客さまをお世話する業務、現場でしか行えない業務が大半です。もちろん、肉体的負荷が大きい業務をロボットで代替したり、IT化による業務の効率化は不可欠ですが、現在のコロナ禍においても、介護業界が人を介さないサービスに移行することはとても難しいと言えます。一方で、中長期的な人材不足傾向は変わらないでしょう。

経済産業省によれば※、2035年には介護職員需要295万人に対し、供給は227万人と、68万人の需給ギャップが見込まれるそうです(同省の試算では最大79万人)。人の介在が必須、かつ中長期的に人材の需給ギャップがさらに拡大する業界において、最も重要になるのは人材の採用力だと考えております。

「量から質」への転換に大きく舵取りをした2017年6月期、私は「競争力」「社員力」「財務力」で業界No.1を目指すと発信いたしました。これは、サービスの質向上、教育や研修の充実、収益力の向上を意味します。さらに、それを基盤として、「社員の処遇」についても、業界No.1を目指す方針を謳いました。

お客さま満足度の高いサービスの提供が利益の向上につながり、業界で競争力のある処遇改善が可能となり、その結果、介護人材の就職先として選ばれる会社になると考えております。

採用力強化に関するこういった流れを創り出すためには、私は今後2、3年が非常に重要な局面になると捉えております。コロナ禍の影響で経営的に厳しい事業者の増加が見込まれるなか、当社は盤石な財務基盤・収益構造を基礎に、より働きやすい環境を提供できると考えるからです。

3つの業界No.1への取り組みをもとに、処遇の改善を推進し、採用力の更なる強化を図ってまいります。

※(出典)経済産業省「将来の介護需要に対する高齢者ケアシステムに関する研究会報告書」

株主の皆さまへのメッセージをお願いします。

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第1号ホームの開設から16年目にあたる2021年6月期は、創業期から成長期に移行する重要な1年と捉えております。成長スピードを加速すべく、事業投資の強化を図ってまいります。

2005年4月に第1号ホームを開設してから丸15年。16年目となる2021年6月期は、本格的な成長期に入るための重要な1年と認識しております。

企業の成長には、創業期、成長期、成熟期、衰退期というサイクルがありますが、当社にとってのこれまでは創業期であり、これから本格的な成長期に入ると考えております。さらに、創業期と成長期の違いは、成長のスピードにあると考えます。

人材が必須の介護事業においては、介護付有料老人ホームを中心に年間10ホーム前後の開設を計画しておりますが、この事業領域だけでは、中期目標の連結売上高500億円をスピード感をもって実現するのは難しいと考え、当期より第2の柱である不動産事業を本格的に立ち上げております。

前述のとおり、コロナ禍の現状は、介護事業における人材投資にとっても、不動産事業における開発投資にとっても、当社の優位性を発揮できる好機です。今後2、3年の事業投資を通じた4つの業界No.1の実現が、成長スピードの加速を牽引すると考えております。

コロナ禍という難しい状況において、感染症予防対策など、一層の体制強化を図り、トラブルのない現場づくりを推進してまいります。また、業務の一層の効率化を図ることで、増収率20%以上、増益率30%以上、経常利益率10%以上という収益構造を盤石なものにし、配当性向につきましても、株主の皆さまのご期待に応えていきたいと考えております。

株主の皆さまには、本格的な成長期に挑戦する当社を変わらずご支援くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。