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4つのNo.1を実現し、業界のリーディングカンパニーとして、拡大する介護需要に応え、さらなる成長を追求してまいります。

成長戦略「既存事業の発展と事業領域拡大」のもと、4つの点で業界No.1を目指すことで他社との差別化を進め、中期目標として「連結売上高1,000億円以上、経常利益100億円以上」を目指すチャーム・ケアグループ。その事業活動の概況と今後の取り組みについて、代表取締役会長兼社長の下村隆彦に聞きました。

当期のポイント

  • 介護事業では、当社および連結子会社であるライク社とも既存ホームが引き続き高入居率を維持し、好調に推移しました。利益面では、コロナ関連経費の大幅な減少に加え、業務効率化等の効果により利益率が改善しました。不動産事業では2件の開発案件を計画通りに売却、その他の事業の人材派遣事業も順調に進捗したことにより、2024年6月期(以下、「当期」)は売上高、営業利益ともに目標値を上回り、9期連続の増収増益となりました。

インタビュー

当期の事業環境、ならびに事業活動と業績のレビューをお願いいたします。

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介護事業では6ホームの新規開設と、ライク社による1ホームの事業譲受により、運営ホーム数は91ホームとなり、当社、ライク社ともに既存のホームが高入居率で推移しました。不動産事業は、仲池上と宝塚小浜の2案件を予定通り売却し、順調に推移しました。

<介護事業>

光熱費や物価の高騰による影響は継続しているものの、新型コロナウイルス感染症がインフルエンザ等の感染症と同じ扱いとなり、コロナ関連経費が大幅に減少しました。また、少数精鋭プロジェクトを進めたことで、生産性向上による利益率改善と、サービスの質向上に寄与いたしました。

当期は7ホーム(首都圏3ホーム、近畿圏4ホーム)、486室の新規開設(ライク社による1ホームの事業譲受を含む)により、累計で91ホーム(首都圏42ホーム、近畿圏49ホーム)、6,159室(首都圏2,523室、近畿圏3,636室)となりました。月に2回業績会議を実施し、入居促進を含め課題を抱えているホームについては、早期改善を促していることも奏功し、当社の新設ホームとライク社ホームの入居が特に好調に推移し、既存ホームにおいては高い入居率を維持しております。

2024年3月にライク社が株式会社グッドタイムと事業譲渡契約を締結し、同社が運営する大阪府羽曳野市の介護付有料老人ホームの運営事業を譲り受けました。業界の常識にとらわれない当社のノウハウを投入することで、早期の入居率改善と運営の効率化を図ってまいります。

進行する建設資材の高騰や人材不足により、今後ますます新規のホーム開設のペースが鈍化すると予想されます。すでにライク社という先例がありますが、当社がM&Aで取得したホームの課題を解決し利益を確保することで、従来の、あるいはそれ以上のペースでのホーム数増加を実現したいと考えております。

2023年8月には、ホームの入居営業に特化したチャームシニアリビングという子会社を設立しました。介護事業において、売上成長に直結する入居の推進は不可欠な要素であるとともに、紹介料という内部コストの削減につながります。また、お客様の状況に応じて、他社ホームをご紹介することで、外販売上高を獲得することも可能です。

また、2024年6月に東急不動産株式会社の子会社である株式会社東急イーライフデザインの株式を一部取得し、業務提携を行うことを決定しました。両社グループの持つ知見・ノウハウを掛け合わせることで創造される新たな住宅・サービスを通じて、ご高齢者の誰もが自分らしく、いきいきと輝ける未来と介護業界のさらなる発展を目指してまいります。

<不動産事業>

東京都大田区の土地建物(仲池上案件)ならびに、兵庫県宝塚市の土地建物(宝塚小浜案件)については計画どおり2024年6月に売却を完了しました。また、同年6月に「チャームプレミア京都烏丸六角」の建物(借地権付建物)を売却しましたが、同時に売却先を賃貸人、当社を賃借人とする当該固定資産についての賃貸借契約を締結しており、引き続き当社が運営を行ってまいります。

<その他の事業(グッドパートナーズ社)>

人材派遣や訪問看護の事業が好調に推移しました。当社の介護事業を補完し、シナジーを発揮するビジネスとして、引き続き推進してまいります。

<新規事業>

AI技術を用いた介護事業者向けのBtoBサービスとして、介護現場における虐待防止システムの開発に取り組んでおり、当社のホームで試作品を用いた実証実験を進めております。早期の事業化に向けて、引き続き注力してまいります。

中期経営計画実現に向けた、4つのNo.1を目指す取り組みについてお聞かせください。

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売上高・運営居室数といった「量」の規模拡大を目指すのではなく、サービスや社員の「質」といった4つの点(①競争力、②社員力、③財務力、④社員処遇)で業界No.1を目指し、他社との差別化を進めることで、中期経営計画の実現を目指してまいります。

業界No.1を目指す4つの点について、①競争力は、「チャーム・ケアの施設に入って良かった」と思っていただけるよう、介護サービスの品質において、業界No.1を目指します。②社員力は、教育や研修を充実させることで、介護サービス・コミュニケーション・接遇等の能力を高め、社員のスキルにおいて、業界No.1を目指します。③財務力は、今後の市場環境の変化、介護保険法の改正を踏まえ、高付加価値のサービスを提供する収益性の高い介護施設の開設・運営に注力し、収益力(売上高経常利益率)において、業界No.1を目指します。④社員処遇は、「介護業界で働くなら、チャーム・ケアで」と求職者に選ばれるよう、高い収益力を源泉とした処遇改善を継続して実施し、給与水準において、業界No.1を目指します。

その実現に向けて2023年から取り組んでいるのが少数精鋭プロジェクトです。見守り支援機器、インカムなどのIT機器や、ChatGPT、配膳ロボット、排泄ケアの質向上につながるポータブルエコーなどAIを活用したDX化による業務の効率化・省力化に加え、各ホームに業務遂行能力の高い人材「アソシエイト・リーダー」を配置し、アソシエイト・リーダーを中心とする人員配置の最適化を進め、より少ない人員でより高いサービス品質を実現できるよう生産性の向上を図ることで収益性を強化し、その成果を社員に給与として分配するという取り組みです。

DXに関しては、介護DX推進課を中心にDX環境に対応できるよう社員のリスキリングに努め、各ホームにDX担当者を配置することで社内全体への浸透を図り、DX化によるご入居者様へのサービスの向上、現場の負荷軽減ならびに従業員の処遇改善につなげてまいります。

特に重視しているのが、これらの改善・価値向上に係る取り組みが具体的にどのような経済的成果に結びついているかを定量的に評価することです。この価値観が企業文化になりつつあると感じております。事業として成り立つ新たな取り組みを通じ、グループ会社を含めた全体で介護サービスのさらなるレベルアップを図ってまいります。

サステナビリティの取り組みに関し、取り組みの評価・今後の方向性についてお聞かせください。

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当社はサステナビリティを巡る諸課題への適切な対応が重要な経営課題であると認識し、ステークホルダーの皆さまとの協働を通じて、持続可能な社会の構築への貢献とともに中長期的な企業価値の向上を目指しております。

当社はサステナビリティ基本方針に則り、5つの項目に対し事業を通じて取り組む重要課題として目標を設定しております。当期の新たな取り組みといたしまして、正社員全員の半数以上の賛成が得られたこともあり、週休3日制度の導入を進めております。全社員に強制するのではなく、希望者のみに導入する前提で、一部のホームで試験的に導入しております。社員からも好評を得ており、2024年9月から全ホームへの展開を進めてまいります。

継続しておりますヤングケアラー支援につきましては、特定非営利活動法人ふうせんの会とともに「子ども・若者たち(ヤングケアラー)のつどい」を協働で定期的に開催しており、神戸市とは2024年3月に連携協定を締結し、本格的なヤングケアラー支援の取り組みを開始することになりました。また、尼崎市や神戸市の当社ホームにて小中学生が職業体験をしながら、ご入居者様とふれあう「こどもgaカフェ」を定期的に開催しています。

加えて、2022年10月より、子どもをめぐる社会問題の解決に取り組む認定NPO法人キッズドア様と包括協定を締結しております。この協定は、日本が直面している少子高齢化社会の活性化を目指す新たな取り組みで、貧困などのさまざまな問題を抱えたご家庭をサポートする就労支援を行っております。

卒業後約10年以内の若手アーティストを支援する目的のAGH(アートギャラリーホーム)の活動は、2024年7月「チャームスイート旗の台」で第23回全国公募コンクールを実施し、支援対象アーティストは累計約350人、買上作品は累計約1,200点となりました。さらに、当初のホームにおける活動にとどまらず、さまざまな連携が拡がり、現在では協賛企業が32社に拡がりました。例えば、2024年3月、「チャームプレミア京都烏丸六角」において「京都烏丸六角アートプロジェクト表彰式」を開催するとともに、京都市立芸術大学と連携し、同大学出身の若いアーティストを対象にしたアート作品公募もその一例です。

これらの活動の結果、AGHは、公益社団法人企業メセナ協議会による「メセナアワード2023優秀賞 アートがチャームをつなぐで賞」受賞に続き、「This is MECENAT 2024」の認定を受けました。今後とも、産学協働による活動を推進するとともに、地域活性にも寄与しながら、アートによる共生社会の実現を目指してまいります。

株主の皆さまへのメッセージをお願いします。

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4つのNo.1を実現し、介護業界のリーディングカンパニーとして、拡大する介護需要に応え、成長を続けてまいります。

2070年には我が国の高齢化率は39%の水準になるといわれており、介護需要のさらなる高まりが見込まれます。その反面、少子化により介護人材の確保は厳しさを増しております。4つの点で業界No.1を目指す取り組みを強化することで他社との差別化を進め、介護業界のリーディングカンパニーとして拡大する介護需要に応えていきたいと考えています。土地、建設資材、建築費はいずれも高騰しており、不動産事業は踊り場を迎えることが予想されますが、M&Aなどの新しい事業モデルに注力することで、従来のホーム開設ペース以上を維持し、中期目標である「連結売上高1,000億円以上、経常利益100億円以上」に向けて、さらなる成長を追求していきたいと考えております。

株主の皆さまには、「豊かで実りある高齢社会」実現へ向けて挑戦を続ける当社グループに引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。