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世の中にニーズのある事業に積極的に挑戦することで、
介護事業を核とした複合企業を目指してまいります。

中期目標である連結売上高1,000億円以上の実現を目指し、介護事業に加え、不動産事業を推進し、さらにM&Aや資本提携などを含めた新規事業の創出に積極的に取り組む当社グループ。介護事業を核として事業領域を拡大し複合企業に進化するとともに、多様な雇用を創出したいと語る代表取締役会長兼社長の下村隆彦に今後の成長戦略について聞きました。

当期のポイント

  • 長引くコロナ禍による影響に加え、期末に向けての原油価格高騰によるホームの光熱費の増加などがあった一方、株式会社ライク(以下、ライク社)のグループ入りやIT化促進によるホーム運営の効率化などが奏功し、対前期比では大幅な増収・増益となりました。不動産事業関連においては、自社開発案件やライク社の所有物件の売却などがありました。

インタビュー

2022年6月期の事業環境、ならびに事業活動と業績のレビューをお願いします。

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介護事業では、首都圏で6ホーム、近畿圏で2ホームを新規開設し、子会社化したライク社の4ホームを加え、運営ホーム数は76ホームとなりました。不動産事業は、自社開発第1号案件の土地・建物の売却が完了するなど、順調に推移しました。

第1の柱である介護事業、第2の柱である不動産事業を中心に、概況をご報告いたします。

<介︎護事業>

想定はしていたものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を前期以上に大きく受けました。オミクロン株の蔓延による第6波により厳しい事業環境が続き、さらにその対策に関する従業員への危険手当や感染対策などにより、費用が増加いたしました。オミクロン株は、感染しても無症状や軽症である傾向があり、ホームで感染者が出た際に行うスクリーニング検査により複数の感染者が明らかになったケースもありました。クラスターが発生すると、保健所から入居促進停止の要請があるため、それが結果的に入居の停滞につながり、第3四半期にかけて、入居率が伸び悩みました。

また、スクリーニング検査は迅速な対応を強いられるため、独自で行うことも少なくありませんでした。前期と異なり、補助金で賄えなかった取り組みもあり、コロナ対策関連費用が増加いたしました。さらにロシアによるウクライナ侵攻が招いたエネルギー危機による光熱費の増加、期初に想定していなかったライク社の買収に伴うM&A費用やのれんの償却などが発生いたしました。

しかしながら、第4四半期に入り、入居促進を再開できるようになった結果、期末にかけての入居率の改善につながり、対予想比では若干未達となりましたが、対前期比では大幅な増収・増益となりました。

<不動産事業>

2022年2月に有料老人ホームの自社開発案件第1号である「ソナーレ・アテリア久我山」につき、土地・建物の売却を完了いたしました。また、同じく2月に当社物件の「ルナハート 千里 丘の街」の土地・建物を売却、同年3月と6月には、グループ入りしたライク社物件の「花咲新町」と「花咲」の土地・建物を売却いたしました。これら自社保有物件の売却は、特別利益として、親会社株主に帰属する当期純利益の増益に貢献いたしました。これらも含め、不動産事業関連では想定以上の業績を実現したと評価しております。

<新規事業・その他>

新規事業では、2020年7月に子会社化した介護業界中心の人材派遣会社である株式会社グッドパートナーズが、東京と大阪を地盤に派遣事業の拡大を図っております。当社の教育研修機能を活用し、優秀な介護人材育成に努めるとともに、清掃などの職種を含め、派遣の領域拡大なども進めております。

また、シップヘルスケアホールディングス株式会社との業務提携においては、お互いの知見やノウハウの共有によるシナジー効果を高め、事業拡大や事業創出を行うことを目指しております。

中期経営計画の成長戦略に基づき、今後の事業活動の方向性についてお聞かせください。

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第3の柱を構築すべく、ウェルヴィル株式会社(以下、ウェルヴィル社)との資本提携を通じた、AIヘルスケア次世代サービスの新たな事業モデルの創出を目指します。

第1、第2の柱に加え、第3の柱を目指す新規事業について、中期的な取り組みの方向性をご報告いたします。

<介護事業>

当事業においては、コロナ禍での対応・対策費用増というマイナス要因はあったものの、首都圏・近畿圏の都市部に中・高価格帯を中心としたバランスの良い開設を推進しております。その流れのなかで、近年推進してまいりましたホームに働くスタッフの業務効率化・負担軽減、それに伴うご入居者さまへのサービス向上を目指したIT化を一層推進し、最大限活用するという視点から、全社をあげ介護DXの実現を図ってまいります。

加えて、2022年11月開設予定の『チャームプレミア グラン 御殿山弐番館』では、IT技術を駆使したリラクゼーションルームや空気の力で来訪者の体に付着した菌や汚れを吹き飛ばすことができるクリーンルームを整備し、ご入居者さまに心の安らぎや安心・安全をお届けするなど、これまでにない新たな付加価値の提案を行ってまいります。

<不動産事業>

介護事業を核としながら、周辺事業を構築する戦略のもと、第2の柱として立ち上げた当事業ですが、第38期から業績に貢献いたしました。現在、自社開発案件として、他社運営の大田中央案件があり、さらに苦楽園案件、仙川案件などの開発が順調に進行しております。固定資産売却後のホームの運営を当社が継続する案件もあり、自社による開発事業のみならず、開発後のホームの運営も担えることが当社の大きな強みです。今後とも付加価値の高い開発に基づく他社案件強化を推進するとともに、自社による着実なホーム運営に基づくアセットライト経営を進めてまいります。

当社は、介護事業を通じて蓄積したホーム運営という力を基礎に、介護難民といった社会課題解決の一助となる事業として当事業を捉えております。このため、不動産開発事業ではあるものの、一般の不動産事業に伴う市況変動による影響を回避できております。今後は、幅広い社会課題を解決するため、介護領域を含めた包括的な不動産事業を展開していきたいと考えております。

<新規事業>

2021年11月、「ひとりひとりの豊かな暮らしを支えるAIの実装」を掲げるウェルヴィル社と資本提携をいたしました。現在、同社が開発したAI対話エンジン『LIFE TALK ENGINE』をベースにした対話可能なアバターの開発を進めております。2022年7月より、当社ホームにおいて実証実験に入っており、高齢者の方との対話を通して、認知症の予防や認知機能・健康情報の把握、孤独感の緩和、安否確認などのサービスの事業化を早ければ2023年夏に実現するとともに、“健康寿命延伸”をテーマにしたAIヘルスケア次世代サービスの新たな事業モデルとして、第3の事業の柱へと成長させたいと考えております。また、ウェルヴィル社は2022年7月、サイバリスタ、ソニーマーケティング、大日本印刷、当社、東京大学、ヘルスセンシング(50音順)と産学連携のコンソーシアムを立ち上げ、「高齢者向けサービス創出プロジェクト」を始動させました。当社もこのプロジェクトの一員として、『LIFE TALK ENGINE』と連携した企画・技術開発を通じ、見守りや健康管理・維持を行いつつ日常のお困りごとの解決をサポートしてまいります。

2022年7月1日付の組織変更の目的と今後の方向性について、お考えをお聞かせください。

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責任を明確化することで社員一人ひとりの自主的な意思決定と行動を可能にすると同時に、全社をあげたDX化の推進を目指しております。

今回、組織をフラット化するために本部制を廃止いたしました。また、第3の柱を含めた新たな事業の構築に向けた新規事業の企画推進のため、「DX推進室」と「事業構想室」を新設いたしました。この背景には、激しい環境変化のもと、M&Aを含めた事業創出を推進する当社にあって、素早い意思決定と柔軟な対応が重要との判断がありました。そのために、社員一人ひとりに裁量を与えるとともに、責任を明確化することにより、社員それぞれが自律的に動きやすくすることを意図いたしました。

新設のDX推進室は、全社的なDX推進を担っております。特に、IT技術を活用した新たな事業創出が重要な役割となり、現在は、ウェルヴィル社との協業による事業化に注力しております。さらに、介護現場におけるIT機器の有効活用などを全社的に推進するため、「介護DX推進課」を新設いたしました。ITインフラの導入は適宜進んでおりますが、その使い方についての習熟に全社をあげて取り組むための新組織となります。

プライム市場企業として、サステナブル経営に対する考え方についてお聞かせください。

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「豊かで実りある高齢社会」づくりへの貢献をミッションに、社会・環境をはじめ、サステナビリティに係る諸課題への適切な対応が重要な経営課題であると認識しております。

当社はプライム市場上場企業として、サステナビリティ基本方針に則り適切な対応に努めております。具体的には①地球環境問題への配慮、②人権の尊重、③従業員の健康への配慮、労働環境の整備、処遇改善、④社会との公正・適正な関わり、⑤リスクマネジメント(危機管理)の5つを事業を通じて取り組む重要課題として目標を設定しております。

特に、当期より始動したヤングケアラー支援につきましては、「④社会との公正・適正な関わり」の一環として取り組んでおります。ヤングケアラー、すなわち「本来大人が担うべき家事や家族の世話を日常的に行っている子供」に対し、国や行政による支援はまだまだ不足しています。当社は、全国初となるヤングケアラー支援の専門部署を開設した神戸市へ支援を申し出、紹介を受けた特定非営利活動(NPO)法人に対して物品の支援を行うとともに、「特定非営利活動法人ふうせんの会」と協働し「子ども・若者たち(ヤングケアラー)のつどい」を大阪本社があるビル内の会議室で開催いたしました。今後も関係機関との連携のもと、ヤングケアラーへの支援の拡大を検討してまいります。

株主の皆さまへのメッセージをお願いします。

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介護事業を核としながら、世の中にニーズのある事業に積極的にチャレンジし、事業ポートフォリオを周辺に拡げることで中期目標の達成を目指してまいります。

当社グループは、世の中のニーズを捉え、新たな事業の柱を継続的に創出することで事業領域を拡大し複合企業に進化するとともに、多様な雇用を創出することで、多くの人々が生き生きと働ける企業体を目指しております。そのためにも、多様なパートナーの皆さまとの協働を強化し、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。

株主の皆さまにおかれましては、新たな局面に立つ当社グループを変わらずご支援くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。