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介護業界の常識を打ち破り、
様々な社会課題に積極的に取り組んでまいります。

「原点回帰」を謳う中期経営計画の初年度となる2026年6月期(以下、「当期」)、報告セグメントを「介護事業」と「その他事業」に集約し、本業である介護事業に集中する体制に舵を切ったチャーム・ケアグループ。当上半期における取り組みの現状と進捗、ならびに今後の方向性について、代表取締役会長兼CEOの下村隆彦に聞きました。

当上半期のポイント

  • 介護事業では、ホームと本社が一体となった入居営業の取り組みが奏功したことに加え、既存ホームと、前期M&Aで取得したホームの入居促進が着実に進んだことから、堅調な増収を達成いたしました。利益面では、インフレ環境下で様々なコスト上昇が発生しましたが、ホーム運営における業務効率化によりコスト吸収を図り、大幅な増益を実現いたしました。なお、当期から中間配当を実施し、年間配当37円(予想)のうち20円を2025年12月31日を基準日として配当させていただく予定です。

インタビュー

介護事業を中心に、当上半期のレビュー、ならびに通期見通しの考え方をお聞かせください。

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当上半期における運営ホーム数の合計は111ホーム、居室数は7,509室となりました。そのうち、グループ3社運営のホーム数合計が9ホーム、居室数合計が681室となりました。また、当社運営のホームに加え、グループ会社運営のホームにおいても、入居率は高い水準で推移いたしました。

当上半期は、売上高・利益とも、概ね順調に推移いたしました。介護事業において、ホームと本社が一体となって入居営業を推進し、ご入居者様の数は着実に増加いたしました。中期経営計画では、2028年6月期に連結売上高552億円、同営業利益63億円を目指しておりますが、その前提となる定員数は9,581人となり、1万人規模が視野に入ってまいりました。質を担保したホーム運営に向けて、経営基盤を一段と強化すべきステージに立っていると認識しております。

当期より、報告セグメントを「介護事業」と「その他事業」に集約し、当期進行中の不動産案件は、その他事業に含めるとともに、開示をより透明性の高い内容に更新いたしました。介護事業では、前期に取得したM&Aホーム案件の統合プロセス(PMI)も順調に進み、グループ全体の底上げに寄与しております。

事業を取り巻く環境は、インフレの進展により、各種コストの上昇が続いておりますが、当社グループは、これを単なる「負担」として捉えるのではなく、「生産性の向上によってコスト増を吸収し、さらなる成長につなげていく」機会と捉えております。

現在、最も注力している「少数精鋭プロジェクト」では、IT技術の活用や業務の役割分担を明確化することで、少ない人数でも質の高いサービスを提供できる体制づくりに取り組んでおります。業務の効率化と生産性向上を通じて生まれた利益を原資として、ベースアップを含む社員の処遇改善を継続的に実施しており、当社の給与水準はすでに業界トップレベルにあると自負しております。

経営の基本は、売上収益を最大化し、コストを最小化することにあります。入居促進による売上高の最大化と、少数精鋭の運営体制によるコスト最適化を両輪として、インフレを上回る生産性の向上を実現し、通期予想の達成に向けて邁進してまいります。

介護事業の当上半期における施策の進捗、今後の強化ポイントについてお聞かせください。

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中期経営計画における介護事業への「原点回帰」の方針のもと、「現場力」の向上によるご入居者様に選ばれるホームの増強、処遇・職場環境の改善等による人材強化、少数精鋭・DX化による生産性の向上に取り組んでおります。これらの取り組みを通じ、サービスや社員の「質」のさらなる追求を実践してまいります。

現場力の向上に向けた教育研修の強化について

現在、私が最も情熱を注いでいるのが困難ケアと身の回りのお世話をする「ケアの分業化、専門化」です。困難ケアはスキルの高いスタッフに任せ、他のスタッフが身の回りのお世話に専念できる環境を整えることで、ケアの質の向上と効率化を更に推し進めていきたいと考えています。

その実現に向けては、現場力の向上が必須です。教育研修については、研修センターでの座学よりも現場OJTを重視する方針のもと、教育研修本部の人員を増強し、課題のあるホームを抽出して、3~4か月間集中的にインストラクターが訪問指導を行う体制で現場力の向上を図っております。

「少数精鋭」の「少数化」については、前期、それなりの成果を上げることができ、それにより創出された利益を従業員の処遇改善に還元いたしました。その結果、当社の給与水準は業界トップレベルに達したと認識しております。一方、「精鋭化」についてはまだ道半ばです。

サービスの質を落とさず「少数化」を図る以上、一人ひとりが「精鋭」でなければなりません。当期は現場でのOJTに加え、階層別の研修プログラムをさらに拡充いたしました。単なる技術習得ではなく、チャームケアの哲学を共有し、自ら考えて動ける人材を育てることが目的です。このように、当期は一人ひとりのスキル向上を図り、ホーム全体の底上げにつなげてまいります。

処遇・職場環境の改善のための取り組みについて

選択的週休3日制の取り組みは大きな成果を上げております。前期の選択率は近畿圏で約60%、首都圏で52~53%に達しており、私が目標としていた50%以上を十分に達成できました。この取り組みは介護業界からも高く評価され、全国介護付きホーム協会から当社の定着ノウハウについて発表してほしいとの依頼をいただいております。

介護業界は24時間365日休みなしの運営が必須ですから、選択的週休3日制は本当に実現できるのかと危惧されておりました。他社でも挑戦して失敗した例がありますが、当社が成功した要因は、まず希望者の多い少数のホームで「やってみる」ことから始めたことにあります。課題を一つずつクリアしながらノウハウを蓄積し、それを横展開していくことで、取り組みが進みました。

この成果は、新卒や中途の採用に新たな効果をもたらしました。特に新卒採用では前年の内定者数を大幅に上回り、早期に採用目標に到達し、さらに増加の勢いであったため最終的に110名で募集を締め切りました。当社は処遇面でも働き方の面でも業界トップレベルを実現しており、介護を志す人にとって魅力的な選択肢となっているようです。中途採用への応募も、前期比約2割増加し、離職率も低下しております。

少数精鋭・DX化による生産性の向上の取り組みについて

介護DXの中核となる取り組み「3:0.9ホーム」につきましては、現在、近畿圏・首都圏それぞれ5ホーム、計10ホームで実証実験を進めております。西宮市では既に認可をいただきましたが、他の自治体についても行政にデータを提出し、承認を得る必要がございますので、しっかりとした運営実績を示すことで認可を取得してまいります。

3:0.9ホームを推進することは、業務効率化の格好のトレーニングになります。まずは、限りなく3:1に近づける運営力を磨くことが、今後の生産性向上につながると考えております。

IT・AI化については、ポータブルエコーの活用を推進してまいりました。当上半期は、60%以上のホームで積極的に活用できるようになりました。また、AIを活用したケアプラン作成支援システムの開発も進めております。当初4ホームで試作品の運用を開始し、改善を重ねた上で、全ホームへの展開を計画しております。このシステム導入によりケアマネジャーの業務効率が大幅に向上し、人員の最適配置の実現に寄与すると考えております。

このほか、新規開設・エリア拡大について、当期は10ホームの新規開設(M&A含む)を予定しており、計画通りに進捗しております。また、名古屋圏への進出につきましても、有力な物件情報が集まりつつあります。

M&Aを通じたホームの取得につきましては、2026年3月に株式会社ビケンテクノからの事業譲受を予定しております。これは仲介会社を介さず、先方の経営トップとの信頼関係から実現した案件です。「当社に任せたい」と言っていただけたことを大変嬉しく思っております。

新規事業におけるAI技術を用いた介護事業者向けサービスの事業化の進捗について教えてください。また、「介護難民」救済のための取り組みなど、新たな展望についてお聞かせください。

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新規事業の領域では、介護業界が抱える様々な社会課題に対し、従来の延長線ではない解決策を構想し、社会実装に挑戦してまいります。

虐待防止システムについては、2回目の実証実験を終え、いくつかの課題が明らかになりました。現在、改善策を検討しているところで、事業化には今しばらく時間がかかりそうですが、開発には当社グループの現場の知見を活かしており、業界全体の課題解決に資する事業と認識しております。

「介護難民」問題は、私が強い危機感を持っているテーマです。身寄りがなく独居で暮らす高齢者の中には、限られた年金収入しかない方も多くいらっしゃいます。有料老人ホームの入居費用を払えない、訪問介護も限界があるなど、将来どうなるのかと不安を抱えておられます。

加えて、介護事業者の倒産が過去最多と報道されておりますが、その陰には廃業がさらに多くあります。廃業によって行き場を失う方々も出ております。私は将来、こうした介護難民を救済できるホームを実現したいと考えております。具体的な構想はまだ検討段階ですが、当社グループが少数精鋭・DX化の取り組みを通じて積み上げる知見のもと、大幅にコストを抑えた運営モデルの構築を想定しております。

サステナビリティの取り組みに関し、特にヤングケアラー支援に係る地方自治体などとの協働が広がっています。取り組みを支える考え方や活動の進捗についてお聞かせください。

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ヤングケアラーの支援、そして若者の育成―これらはすべて、当社グループが社会から真に必要とされる存在であり続けるために欠かせない活動です。当社がこれまで成長してこれたことに対する社会への恩返し、貢献の想いを活動につなげてまいります。

ヤングケアラー支援については、特定非営利活動法人ふうせんの会との協働に加え、地方自治体との連携が着実に広がっております。尼崎市、神戸市、大阪市、横浜市、品川区に開設している当社ホームで「こどもたちが運営するカフェ」を展開しております。ヤングケアラーが自立した生活を送ることができるように当社が提供するサービスについて、自治体からお問い合わせをいただくケースも増えており、当社の取り組みへの認知度が高まってきたと実感しております。

さらに貧困、教育格差、虐待など、こども達を取り巻く社会課題の解決に取り組む認定NPOキッズドアとの協働事業として、当社運営のホームにおいて、こどもの居場所の開設や学習支援施設の併設を実施することで、支援が必要なこども達へのサポートを行っております。

株主の皆さまへのメッセージをお願いいたします。

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業界が直面する社会課題に先陣を切って挑戦してまいります。

私は、日本の介護業界の常識となっている仕組みや縛りに疑問を感じることがあります。当社グループはそれらを打ち破り、積極的に社会課題に取り組んでいきたいと考えております。生産性を徹底的に高め、その成果で社員に報い、ご入居者様に最高のサービスを提供し、そして株主の皆さまには持続的な成長と配当でお応えする。この循環をさらに力強く回してまいります。

当社グループは、介護業界の常識に囚われず、人材確保、生産性向上、介護難民問題など、業界が直面する課題に先陣を切って挑戦し、介護業界をリードする存在であり続けたいと考えております。株主の皆さまには、引き続き当社グループの挑戦にご期待いただき、ご支援・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。